年間ベストアルバム2020(ノイズミュージック中心)+自分の今年の活動まとめ

今年よかったノイズミュージック(思いついた順)

①Flowers In Concrete/V.A.(CD版)

ochiaisoup.bandcamp.com

ochiaisoup.bandcamp.com

CD版(上記2枚のデジタルアルバムとは内容が若干異なる)

diskunion.net


落合soupへのドネーションアルバム。
来日公演を落合soupで行った海外のノイズミュージシャンがディスク1、日本国内でしばしば落合soupでライブを行なっているノイズミュージシャンがディスク2にまとまっている。
公式の文章にも書かれているが、ハーシュノイズ、カットアップハーシュノイズ、ハーシュノイズウォール、インダストリアルノイズ、パワーエレクトロニクスなどノイズ下位ジャンル的にも多岐にわたる選出で、今のノイズミュージックが聴きたい人向きのコンピ盤としても最適。(2017年に16shot par secondからリリースされたノイズコンピ“GENZAI”も良い)

コロナ禍で様々なライブハウス/クラブを金銭的に支えるためのコンピレーションアルバムが作られたが、アルバムとしての完成度は構成、マスタリング、アートワーク等含め本作が最高なのではないか。
Maaaaが入っていないのがちょっと残念。

② Hell in the Blood/Skin Graft

chondriticsound.bandcamp.com


低音で擦れるような高周波音がぶっ潰されてるイントロから徐々にメタルパーカッションが入ってくる展開が最高。
低音で程よく潰れてるハーシュノイズが現場で体験しても、音源で聴いても至高だと思ってる。

③ Whatever Exists In Creation Without My Knowledge Exists Without My Consent /God Is War

norentrecords.bandcamp.com


Deathbed tapesからのリリースもすこぶるよかったGod Is Warのアルバム(Bnadcamp上でname your priceだが同じレーベルから昨年リリースしたアルバムとセットにしてリミックスも追加されたCDが出たっぽい。)
宇宙っぽいジャケにありがちなシンセのリリースめっちゃ長くしたサウンドから始まって嫌な予感がしていたけどブレイクビーツっぽいビートが入ったと思ったらオーケストラっぽい音が入ったりしてきて最終的にめっちゃ格好いいミュージックコンクレートだったという落ちのトラックからはじまり、ビート感のあるシンセ系のカットアップハーシュになるアルバム。

④Bullet Ballet / Kisewa

noslackrecords.bandcamp.com


韓国のインダストリアル/ノイズミュージシャンKisewa の1stアルバム。2曲目のガムランっぽい音に割れたキックが入っているトラックが自分が好きだったころのウイリアム・ベネットな音でとても良い。ジャケットの虚な目をして血塗れになってるKisewa本人の写真も最高。
ソウルにあるオルタナ系のクラブ・新都市に出てるらしい。めっちゃ見たい。

⑤Dakedokienai / Spore Spawn

diskunion.net


静と動が綺麗に分かれる丁寧なカットアップハーシュノイズやLo-Fiなインダストリアルノイズ、純粋なハーシュノイズ(叫び声入り)などノイズの中の色々なジャンルの上質な楽曲が楽しめるアルバム。「静」を表すのに標識みたいなアンビエントサウンドを挟むカットアップハーシュノイズが私は大嫌いなのだけど、Spore Spawnのそれはまじで格好良いので買って聞いて欲しい。

⑥ residue / Nobuki Nishiyama

nnishiyama.bandcamp.com


レコードで買いたくなるタイプのドローン。格好良さを感じるドローンを聴いたのは上野翔(OK?NO︎)のギター2台の圧迫面接みたいな演奏以来。

⑦Asphyxia Apotheose / Pissoir Rouge

www.youtube.com


低音、過入力でグジョグジョになったハーシュノイズと叫び声の1曲目からブチ上がる。BPM早めのノイズビートが入ったトラックや延々コンタクトマイクが入ってる中で何かしら叫んでるトラックも最高。来日して欲しい。

⑧Retrospektiv1 25 / T.E.F.

fantasiaeternal.bandcamp.com

 昨年から再び音源をリリースするようになったT.E.F.の未発表音源のコンピレーション。カットアップハーシュはもちろん、T.E.F.ではあまり出していなかったアンビエントやドローン、リズムマシンを使っているトラックなども入っていてT.E.F.好きな私にはかなり驚きがあったアルバム。

⑨onomatopée suicida/incapacitants

totalblack.bandcamp.com


1曲目のめっちゃモッシュしたくなるタイプのハーシュ、2曲目のChillいハーシュ、3曲目のじわじわ展開していくハーシュどれも素晴らしくまた直ぐにでもライブ見たくなるアルバム

 ⑩Form Hunter/Form Hunter

foundremains.bandcamp.com

 ②でも書いたような低音で他の音を程よく潰すタイプのハーシュノイズ。Form Hunterは高音域も過入力にしていてでかい音でスピーカーで聞くとたまに耳が痛いけど、それでも格好いい。ラスト一曲以外は5分前後なのも聴きやすくて良いです。

 

⑫Spiritual Eugenics/Grunt

diskunion.net

ノイズミュージックのアルバムを作る時、おそらく難しいことの一つにアルバムとしてどうまとめるか、というトピックがあると思う。ハーシュノイズだけでやる~とか60分1トラックのハーシュノイズウォール~とかなら踏ん切りがついていていいのかもしれないけれど、私はリスナーとしてはよほどの出来じゃないと途中で聞くのをやめてしまうパターンが多い(60分聴くためだけに使える時間もあまり持てないのもあるけど)。

で、このGruntのCD2枚組のアルバムはパワーエレクトロニクス(power electronics; 叫び声とかだけじゃないボイスが入ったノイズミュージック)が主だけどもインストも入っていたり、パワーエレクトロニクスのバックトラックやボイスにかけるエフェクトがトラックごとに結構違っていたり、そしてなによりほぼ全曲良かったりということで、飽きずに通して何度も聴けた。(曲の間に全然毛色の違う曲を入れるアルバムはずっとありますが、Gruntはずば抜けてよかったです。どういうことを言っているのかわからないので本当に人に勧めていいのかどうかは不安ではあります。)

Grunt個人のBandcampでライブ音源や過去のアルバムが配信されているので気になった方はぜひ。

grunt-finland.bandcamp.com

 

ノイズ以外(思いついた順)
①Figures/Aksak Maboul

aksakmaboul.bandcamp.com サブスクにもあります。


②unfollow the rules / Rufus Wainwright

open.spotify.com


③ Passport and Garcon/MOMENT JOON

open.spotify.com


④ 吸血時代/片岡フグリ

phetishtokyo.bandcamp.com


⑤5F 4F 32 00 80 C3 10 00 / nona.emanon.4

nonaemanon4.bandcamp.com


⑥Bleu&Vert/Blan(
⑦色彩音楽/World Standard

www.youtube.com


⑧箱庭のソドム(Mix CD)/Lil 涙
⑨Soi48クルーのMix CD

⑩EP + 7 songs & Hell / ゲタゲタ

drugonslayer.bandcamp.com

⑪セレクテッド甘エビワークス/Ennnn

dokidokivisual.bandcamp.com

 ⑫私は月には行かないだろう/踊ってばかりの国

open.spotify.com

daitengが関わったリリース(リリース順。ほぼ全部最高だから聞いて)

① wrenched brain/DSM-XXX

dsm-xxx.bandcamp.com


daitengとnullのノイズユニット。元々ツインベースでノイズをやろうという事で始めたがお互い色々なものをつなぎたくなってベースはたまに使うだけになってしまった。
サーキットベンドディレイエフェクターで作られる腐食したビートをエレクトロニクスで叩き割ったり潰したりした音で作られたトラックが17曲入っています。
割れたCDをジャケットにしました。送料無料です。

 

② STAY OPEN〜潰れないで 不滅の試聴室に捧ぐ名曲集〜/V.A.

booth.pm


トラック提供
ライブハウス/イベントスペース・試聴室のドネーションアルバム。SUNDAY GIRLS/なりすレコードからのリリース。
姫乃たまさんからのお誘いでBBG48の曲をカバー/リミックスしたものの提出期限に間に合わずお蔵入りしていたトラックが収録されています。
あとこの曲、姫乃さんがインキャパシタンツの美川さんと共演した時に一緒に演奏していたようです。現場にいなかったのだけどその知らせを聞いた時はめっちゃ嬉しかった〜
ディスクマスタリングで音ってこんなに変わるもんなんですね。

上記リンクの楽曲提供者のBoothなどではまだ買えるっぽいです。

 

③ Downer game music sampling compilation [BLUE] /V.A.

okuyukashiki.bandcamp.com


架空インターネットラジオばり好いと〜よ!でお馴染みの奥床式が主催した鬱ゲーコンピ。
DSM-XXXで参加。ドラッグオンドラグーンをモチーフに新宿でフィールドレコーディングした音をオーバーレベルにオーバーレベルを重ねてEQいじってネイチャーハーシュノイズウォールにしたトラック。もちろん元ネタはドラッグオンドラグーンEエンディングのスタッフロール時に流れる街中のフィールドレコーディング音源。完全に自分たちで演奏したものではない、偶然の産物なので複雑な気分ですがめちゃくちゃ良い曲になったと思います。
自分らのあとどんな曲が入るんだろう、やっぱラストトラックかなと思っていたら全体の中間に入ってて不思議に思ったのだけど次のトラックが萌え萌えロリータ天使さんの延々一斗缶を金属バットで殴る様な曲だったので完璧な流れだった。アルバムとしても最高なので聞いて欲しい。HAIZAI AUDIOさんのトラック、今年1番良かった。

④ activities to be born again/ten thousand tapes

tenthousandtapes.bandcamp.com

 


daitengが2018年の最初の方までやっていたカセットテープレーベル・ten thousand tapesの久々のリリース。
私はもう運営には関わっていないですが、レーベルを再始動させる際はこれを作って出して欲しいと交代したオーナーにお願いしていたテープです。

ten thousand tapesはマスターから同じ音が収録されている製品を作るのではなく、マスターから製品①を作り、製品①を製品②にダビングする、製品②を製品③にダビングする...という風に作っていくため製品一本一本に収録されている音が異なる(ダビングによって劣化するため)カセットテープを作り売っていました。各リリース20〜50本の限定で、一本一本に「○/20」みたいにナンバリングをしていたのでそれが何回目のダビングの音がわかったり、ダウンロードコードを一緒につけることで買った人は元の音を聴けたり、その気になれば自分が手に入れられなかったナンバーのカセットテープも作ることができるという仕様でした。

なんでこんな形態にしたのかというとレーベルを始めたいなと思っていた当初、レコードブームにあやかってか、Vaporwaveの流れからかカセットテープが何故かもてはやされるようになっていたことへの疑問や音楽のサブスクが日本でも市民権を獲はじめて音楽を所有するとは〜みたいなことを色々考えていたり、単純にレーベルをやる上で、いい音楽/いい音楽家をその新曲とともに紹介するみたいなディストロ的なもの止まりではなんか物足りないなぁ、CD-Rリリースではなんだかなぁ、レコードやプレスCDは金銭的に無理でやっぱカセットテープかなぁ、などなどを考えながらシチュアシオニストインターナショナルに関するゼミに潜っていたらなんか思いついたからです。ほんとね、目の前がピカッ! って光るくらいね、なんつうの? クスリやったときみたいに、音に光がついて、色がついて、左右対称で、まぶたの裏にピカッ! って飛び込んでくるぐらいのアイデア……もうほんとクスリやったときみたいにピカピカッ、ピカッ! っていうね。ピカピカッ、ピカッ! ピカピカッ、ピカッ! ピカピカッ、ピカピカッ! っていうね、アイデアがピカピカッ! って浮かびまして。
で、11作品のリリースが出来た後、色々あってレーベルを辞めることにし、最終リリースはドゥボールの紙やすりの実践を引用しつつ多少発展させ、周りのカセットはもちろんプレイヤーも全部無くなさないと“The Future Of Music The Subject”には達しないと思い、ジャケットの外側に紙やすり、内側にはイズーの“The evolution of the technical sensibility in poetry”の図を模した絵を、そしてカセットテープのテープ部分を紙やすりに変えたものとしました。

Introduction to Isidore Isou | Sam Cooper | Research Blog | Avant-Garde  Literature and Visual Culture

そんな(理念(妄想)上は)録音物としての音楽を終わらせたレーベルが再び活動し始めるならまず何をすべきか(何も無かったかのようにリリースすることは許されない。なんとなく紙やすりテープをリリースした訳ではないので。)と言ったら、「無」もしくは残骸(詩であるなら子音と母音、アルファベット間の音の連なりを失わせた後の音)から作品的な何かを生成しなくてはならないわけで、私の想像力では「何も録音されていないテープをten thousand tapesの方法でやっていくことで生まれる何か」を提示し販売することだろうという結論にいたりました。

やめたレーベルに口出すのはナンセンスの極みであることはわかっているけども、こればかりは譲れなかったのでお願いしたら爆笑してOKしてくれたのでありがたかったです。
そんなリリース。めっちゃ良いドローンが生まれました(上記リンク内のsoundcloudで聞けます)。
ten thousand tapesの今後のご多幸を祈念しております。(リリース興味ある人は気軽にデモを送ると良いと思います)

 

⑤ t’as éteins la radio​?​(​ラジオ消した?)/V.A.

jigokuthug.bandcamp.com


姫乃たまさんのラジオ番組の音声をサンプリングして作られた楽曲のコンピレーションアルバム。daitengが主宰している地獄でなぜサグいからのリリース。
姫乃さんがラジオ番組をはじめたことを知って真っ先に彼女の声をサンプリングしたくなって訊ねてみたら即OKが出たのでどうせならコンピにしようと思って企画したアルバム。トラックをツイッターで募ったり、興味ありそうな人を直接さそったりして完成しました。提出された曲を聞いたらなんだか小松左京の「影が重なる時」的な終末感があってこれはいいコンピレーションアルバムになったなぁと思いました。楽曲を提供してくださったみなさん、マスタリングまでしてくれた雷音舎さん、そしてダウンロードしたら聴けるボーナストラックとして声(サンプル)を収録してくださった姫乃さん、ありがとうございました。

 

元々自分が姫乃たまを知ったのは2012年にuplinkであったインディーズアイドル名鑑の発刊イベントで司会としてでていたことからで、その日は本当に司会だけで姫乃さんは歌わなかったのだけど妙に声に惹かれ、その後ライブイベントに行ってなんだかんだでこのリリースに繋がっていると思うと不思議なもんですね。

ten thousand tapesから出した姫乃さんの曲(代々木ステップウェイの最後の店長・踊ってばかりの国のベーシスト・谷山さんが書いた「グレーテルのその後」、なんちゃらアイドルのプロデューサー永岡さんが書いた「SF(少し不思議)」)も本当にリリースできて良かった〜

 


来年に期待してること
①epepeの復活(ソルマニアと同じイベント出て欲しい)
②Advokat Ihrer Hoheitの再発
③Scumの新譜
④佐藤あんこのアルバム
⑤Quarta330のアルバム

⑥自分ら主催でイベントを行う